社会にある問題を、事業(ビジネス)の手法でもって解決しようとする試み。
それが新しいビジネスの形、「社会起業」(ソーシャル・エンタープレナー)です。
家族の問題、地域の問題、会社や行政がこれまで見過ごしてきた社会問題に関心をもち、どうしてもそれを解決したい場合に、ビジネスという「仕組み」を取り入れて、継続的に問題解決に取り組んでいくことがその意義です。
社会起業では、事業を通じて「儲け」を出すことももちろんあります。しかし、根本的にはその「儲け」た金銭は、個人的な利益ではなく、あくまで社会問題の解決という目的達成の手段としてとらえられています。どうしても解決したい問題を解決するために、メッセージを発信し、多く人を巻き込んでいく、そして社会を少しでもよりよいものに変えていく。
このように社会を、世界を、「変えていく」「変えようとする」力こそが社会起業の原動力なのです。
さて、では、社会起業においてどうしてビジネスの手法が有効なのでしょう?
・ソーシャルマーケティング(調査・戦略)
社会問題の解決のためには事前の調査が必要です。社会問題の根底にある真の問題は何か?どのようなニーズを満たすことが必要なのか?一定の仮説のもとに徹知した取材・調査を行ったうえで適切な問題解決の手段を選択し計画・戦略をたてなければなりません。いくら問題意識が高く情熱をもって取り組んでいても、社会問題を解決するためのニーズを正確にとらえ適切な活動をおこなっていなければ、その活動は無駄に終わってしまうことにもなりかねません。
・ソーシャルキャピタル(人材・融資)
社会問題の解決のためには思いだけでなく、その活動の原資となる資本も必要です。これには金銭的・物的な資本も、人的な資本も含まれます。目標達成のために必要なお金について融資を受けたり、補助金・助成金あるいは寄付や賛助を受けることも考えられます。また、人的資本もボランティアだけでなく継続的な事務運営や専門家の助力が必要なることもあります。こうした金銭的・物的・人的資源を集める手法も検討する必要があります。
・ソーシャルプロモーション(広報・広告)
社会問題の解決のために少しでも多くの、少しでも広範囲の人にメッセージを 伝えたい。そのためには各種メディアや広告媒体を通じての広告・宣伝と、また最近流行のブログ・フェイスブックなどのインターネット上のソーシャルネットワーク、あるいはニュースレターや地域誌、講演活動やイベント主催など、これまでビジネスの世界で行われてきたプロモーションを社会問題の解決にも取り入れ、より広範囲により効果的にメッセージを発信する必要があります。
・ソーシャルマネジメント(組織・運営)
社会問題の解決のために調査を行い戦略を立て、必要な資本を集め、多くの人に広報・広告するというそれぞれの活動を、それぞれ運営し組織化していくことで「仕組み」としてまわりだし、 やがて社会や世界に足いして大きなムーブメント(運動)とインパクト(影響力)を与えていく力をもっていくことができます。それぞれが有機的にうごくようオーケストラの指揮者のように動かしていく手法はビジネスのおけるマネジメントが参考になります。
こうしたビジネス手法をうまく取りこんで、多くの人の共感を得て巻き込んでいき、社会によりよい変化を起こすことができれば社会起業は成功したと言えるでしょう。それは利益の数字の大小にかかわりなく満足を得ることのできる、新しい形の「働き方」だといえます。
では、このような社会起業をどのように立ち上げ、うまく運営していくのか。これについてお伝えしていきたいと思います。